データライフサイクル管理が担う役割とは?
世界のデータ量に関する統計は驚異的です。IDCの調査によれば、組織内のデータの90%が非構造化データであり、その量は増加の一途をたどっています(2023年には全世界で73,000エクサバイトを超えると予測されています)。
データ量の増大に伴い、組織内のデータライフサイクル管理を効率的に行うことの重要性が高まっています。データのライフサイクル管理は、ビジネスの生命線であるコンテンツのセキュリティ、信頼性、可用性の確保を可能にします。
このブログでは、データライフサイクル管理の主要な役割である守秘性、完全性、可用性の確保と維持について、コンテンツの可能性を最大限に引き出すという観点から解説します。
データライフサイクル管理(DLM)とは?
データライフサイクル管理(DLM)とは、組織のデータ資産を管理する戦略的アプローチであり、データの取得や生成から、保管、アーカイブ、保持、安全な廃棄に至るまでの全行程を最適化することを目的としています。
データライフサイクル管理のプロセスを確立するには、データのライフサイクル全体を通じて、ポリシー、役割、責任を定義し、実施する必要があります。これにより、コンテンツの管理と可視性が向上し、正確でセキュアな、コンプライアンスを担保した利用が可能になります。
データライフサイクル管理における3つの主要な役割とは?
守秘性(Confidentiality)、完全性(Integrity)、可用性(Availability)は、CIAの三要素と呼ばれ、データライフサイクル管理における主要な役割であり目標でもあります。
役割・目的 | 説明 | 対策 |
守秘性の維持 | 秘密情報を不正なアクセスや開示から保護し、プライバシーを維持し、侵害を防止する。 | データの暗号化、アクセス制御、分類 |
完全性の維持 | ライフサイクルを通じてデータの完全性と信頼性を維持し、不正な変更、破損、改ざんを防止する。 | データの検証とバージョン管理 |
可用性の維持 | 必要なときに許可されたユーザーがデータに一貫してアクセスできるようにし、ダウンタイムを最小限に抑え、事業継続を可能にする。 | 一元化されたクラウドストレージ、バックアップ、冗長性、フェイルオーバー、ディザスタリカバリ |
次に、データガバナンス、セキュリティ、コンプライアンスにおける守秘性、完全性、可用性の重要性について解説します。
データの守秘性
データライフサイクル管理の役割と目的を達成するためには、コンテンツを不正アクセスから保護し、重要な情報の守秘性を確保する必要があります。
DLMがデータのセキュリティとプライバシーの維持にどのように役立つかについて説明します。
- データの分類:守秘性と重要度に基づいてデータを分類し、高度な保護が必要なコンテンツを特定する。
- アクセス制御:データへのアクセスを、許可された個人またはシステムのみに制限する制御メカニズムを導入する。
- 暗号化対策:保存時・転送時のデータを暗号化によって保護し、万が一情報漏えいが発生した場合でも、正しい復号化キーがなければデータの読み取りができないようにする。
データの完全性
データの完全性の維持とは、データのライフサイクル全体を通してデータの品質と信頼性を維持することを意味します。PreciselyとLeBow College of Businessの調査によれば、回答者の4人中3人がデータ品質が組織の最大の関心事であると回答しています。データが正確で一貫性があり、改ざんされていない保証は、データに基づく適切な意思決定に欠かせない重要な要素となります。例えば、銀行業界では、データの小さなミスが大きな損失につながるおそれがあり、医療業界では、不正確な患者記録が誤診や不適切な治療につながるおそれがあります。
データの完全性をサポートする基本的なDLM対策には、以下の要素が含まれます。
- データのチェック:データ入力時にチェックを実施し、正確性を確認する。
- 問題の検知:データの破損、不完全性、重複などの問題を検知する。
- 変更履歴の追跡:データに加えられた変更を追跡し、履歴を管理する。
データの可用性
データの可用性とは、必要なときに確実に情報にアクセスできるようにすることを意味します。データの可用性を維持するには、データのサイロ化を排除し、ダウンタイムを防止する必要があります。データライフサイクル管理戦略には、データの可用性に関する以下の内容が含まれます。
- スケーラブルなクラウドストレージ:データストレージをクラウドに一元化することで、データの断片化やローカルストレージの制限に伴うリスクを最小限に抑えると同時にアクセス性を高め、スケーラビリティを可能にする。
- 冗長性とバックアップ:複数のサーバーやクラウドプラットフォームにデータを複製することで、1つのシステムに障害が発生しても、別のシステムがすぐに引き継ぐことができる。
- 負荷の分散:複数のサーバーに通信を分散させることで、1台のサーバーの過負荷を防ぎ、継続的なアクセスを可能にする。
- ディザスタリカバリ:自然災害、サイバー攻撃、システム障害などの不測の事態においても、データの可用性を維持するための対策・手順を策定する。一般的には、データの復旧のための明確なプロトコルが含まれ、ダウンタイムとデータ損失の最小化を図る。
データの可用性は、業務効率に影響します。IDCによれば、非構造化データがほとんど(または完全に)サイロ化されている組織の96%は、コンテンツにどのような情報が含まれているのかを把握していません。
データライフサイクル管理が重要である理由とは?
ニューバンテージ・パートナーズが実施したエグゼクティブ調査によれば、ビジネス価値の創出を念頭に置いたデータ戦略を正式に策定している企業は53%に過ぎません。これは、企業が業務を最適化し、成果を達成するうえでデータ管理がいかに重要かを考えると、懸念すべき数値です。
次に、データライフサイクル管理フレームワークのメリットについて説明します。
データ資産を最大限に活用して意思決定を支援
アクセンチュアの調査によれば、組織の持つデータを「十分に信頼している」と回答したのははわずか29%でした。DLMにより、データの重複や不正確性を解決し、陳腐化した(有用でない)情報を排除し、データの信頼性を確保することで、実用的なインサイトの抽出と優位性の獲得が可能になります。
非効率性の解消によりコストを削減
データライフサイクル管理ポリシーの導入は、業務の効率化とコストの削減にもつながります。例えば、自動化された分類とアーカイブのプロセスは、データ管理に必要な時間と手間を削減します。DLMは、不必要なデータの重複、ストレージシステムの過負荷、膨大な量の冗長または陳腐化した管理に関連するコストを防止することで、リソースの利用を最適化します。
適切な保護によりデータリスクを回避
データは重要な資産である一方で、適切に管理されなければ負債化することもあります。データのライフサイクル管理は、以下のようなリスクを軽減するために重要です。
- データ侵害(漏えい)
- 不正アクセス
- データの破損・損失
データライフサイクル管理ソリューションは、堅牢なエンタープライズ・ストレージ、バックアップ、セキュリティ対策により、外部・内部の脅威から資産を保護することを目的としています。すなわち、情報漏えいの可能性を最小限に抑え、インシデントから生じる財務面およびレピュテーションの損失を軽減します。
財務的負担を回避するためのコンプライアンス要件への対応
データ・セキュリティは、法律や規制に対するコンプライアンスにも関連しています。地域や分野によって、データの収集、保存、取り扱いに関する規制があり、守秘対象の情報や個人情報に関しては特に厳しい規制があります。欧州のGDPRや医療のHIPAAがその例です。
保存と廃棄のポリシーを策定し、守秘対象のコンテンツの管理方法を文書化し、セキュリティ対策を実施することで、データ保護と関連法規に対するコンプライアンスの確保と維持における組織のコミットメントを示すことができます。
データライフサイクル管理プロセス
データのライフサイクルは、データがシステム内に存在する全期間を意味します。効果的なデータライフサイクル管理プロセスの主な段階を以下に示します。
- データの生成と取得:最初の段階となるのが、データの生成と取得。個人情報を含む守秘対象情報を扱う場合に必要な許可や同意の取得、標準化されたフォーマットとメタデータのタグ付け、コンテンツのクリーニングと分類などの工程が含まれる。
- データの保管とバックアップ:この段階では、適切なストレージ・ソリューションを選択し、不正アクセスを防止するため、情報をセキュアなストレージに確実に保管し、さらにバックアップも保管する。
- データのアーカイブと保持:この段階では、アクセス頻度の低いデータを費用対効果の高い方法で保存する。コンプライアンスを維持し、必要に応じて過去のデータにアクセスできるようにするには、データのアーカイブが不可欠となる。データ保持ポリシーを確立し、法や規制による要件、ビジネス上のニーズ、データの関連性を考慮し、データを保持する期間を定義する。
- データの破棄:データはいずれ古くなって有用性を失い、セキュリティリスクをもたらす。セキュアで不可逆的な方法でデータを破棄し、潜在的な情報漏えいの回避を図る。
上記の各段階を効果的なものにするためのコンテンツライフサイクル管理のベストプラクティスについては、こちらの記事をご覧ください。
Boxでデータのライフサイクル管理を改善
Boxは、データのライフサイクル管理をセキュアに、容易にします。Boxのコンテンツクラウドは、単一のプラットフォームでコンテンツの一元管理を可能にし、ファイルの作成、共有、リアルタイムでの共同編集、変更履歴の追跡、署名の収集、保持ポリシーのカスタマイズなど、さまざまなタスクをサポートします。
Boxのコンテンツクラウドは、単一のコンテンツレイヤーを提供し、チームのニーズに即した利用を可能にしています。また、エンタープライズグレードのセキュリティとコンプライアンスにより、データの作成から削除までの前段階を保護します。
Boxは、多くの先進的な企業に信頼され、リスクの軽減、データの守秘性、完全性、可用性の確保と維持をサポートしています。柔軟な保持期間の設定、証拠開示のためのデータ保全、破棄の管理などの機能により、データガバナンスをシンプルに実現しています。
Boxのコンテンツクラウドは、前述のデータライフサイクル管理の主要な目的を全て満たす環境を提供します。ご相談・お問い合わせをお待ちしております。
**Boxは、高度なプライバシー、セキュリティ、コンプライアンスを備えた製品とサービスの提供に尽力しています。ただし、このブログ記事で提供される情報は、法的助言の提供を意図したものではありません。適用される法律に対するコンプライアンスを検証する際には、お客さまが自らデューデリジェンスを実施することを推奨します。